好きなことは売らなければいけないのか

僕のお友達に、エクセルやパワーポイントを駆使して「ボードゲーム」や「クイズ大会」をつくる人がいる。「えっ?ExcelとPower Pointで?」と驚かれるかもしれない。そうなんです。彼(Tくんと呼ぼう)は、表計算とプレゼンのソフトで、ものすごく複雑な遊びを作るのだ。先日、Tくんが開発した「ボードゲーム」のお披露目があり、参加をさせてもらった。

その出来のあまりのすばらしさに、参加者からため息が漏れた。ゲームの物語性、ところどころに散りばめられたクイズのバリエーションに(数百問だそうだ)、パラメータを自動で計算する仕組み、そしてなんといってもエンターテインメント的演出など、参加者全員が心の底から「おもしろい」体験をした。みんな口々にゲームとTくんを讃え、僕は「これは売れるんちゃう!?」というようなことを言ったのだった。

僕は以前から趣味的に絵を描く。ときには、ありがたいことに(というべきか)、報酬を貰って絵を描かせてもらうこともある。「あんたに描いて欲しいから、お願いしたい」と言ってもらえるのは嬉しい。ただ、「こうすれば爆発的に売れるんじゃないか」などと言われると、結構暗い気持ちになる。たまに、そのようなことばをもらう。「絵を描いているから広く売れなきゃいけないのか?」、とそんなふうに思う。

僕にとっては、絵は子供の頃から自発的に楽しんでいる好きなことなのだ。基本的に、人に「こういうものを描いて」と言われてやりたいことではない。つまり、仕事として売るには向いていない。仕事って、ほとんどの場合、人が欲しい物を差し出す、ということだと思う。

一時期、たくさんのウェルカムボードを描いていたことがある。「描いてくれ」と言われて嬉しい反面、求められているとおりのものを四苦八苦しながらいくつも描くというのは、僕にとってはわりと辛いことだと知った。辛抱しすぎて、描くのが好きじゃなくなるところまでいった。

「能力があるならそれだけありがたく思え。喉から手が出るほどそれが欲しい人も要るんだ」と言う人もいるかも知れない。いや、そんな人はいないか…。仮に言う人がいたとして、それはそれで一理あるように思える。しかし、商売にすることで何かが損なわれるのであれば、別にやらなくてもいいと思う(ちなみに、僕は自分に絵で何か能力があると別に思っていない)。

そんなわけで、たいして向いてるとも熱烈にやりたいとも思っていない、でもなんやかんやあって出来るようになった「教えること」「喋ること」「取りまとめること」で生計を立てている。「売れる」、短絡的にこういうマインドでものを喋っている自分ってどんな大人なんだろう?そう思ったエピソードでした。

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