スペシャルCDをもらうこと

みなさんは、CDをもらうことってありますか?僕はこれまでに何度か、特別に選んでもらった曲が詰まったCDを貰ったことがある。今だと、CD-Rを買ってきてそこにデータを焼く、なんてことはあまりやらなくなったのかもしれない。だとすると、少し寂しい気がする。

先日旅立ったお友達が、十何年か前に、僕にCDをくれたのだ。ねえさん(と僕は呼んでいた)とは、好きな歌がどうとかいう話をした記憶はないし、趣味について熱く意見を交わしたこともない。どうしてわざわざ歌を選んで僕に渡してくれたのか、よくわからない。CDには、昭和歌謡やら、洋楽やら、アニソンやら、いかにもねえさんが好きそうで、なおかつ僕も好きになりそうな歌たちが収録されていた。

その「ねえさん選曲集」はiPodにインポートしてあり、この間ちょっと聴いてみたのだ。1曲目か2曲目に「愛は花、君はその種子~The Rose」という歌が入っていてね。涙がこぼれた。辛くなりそうで全部聴けなかった。

ねえさんは、僕に何か伝えたかったんだろうか。ねえさんとよく話をしていた二十代後半は、僕はとにかく職業的に自信がなくて、ふらふらしていたし、もがいていた。ひょっとすると、僕を励ますつもりで音楽を贈ってくれたのだろうか。あるいはただ思いついてCDを作ってくれただけかもしれないけど。そうだとしても、僕という人物を思い浮かべながら、ねえさんの頭の中にあるプレイリストから慎重に選んで1枚のCDに詰め込んでくれたのだ。

ねえさんとよく話していた頃より、僕はいくらかましな人間になったんだろうか。あるいはいろんなことを知ったフリをして、つまらない人間になったのかもしれない。僕は歌を聴いて泣いたけれど、ねえさんと会えない事実をさっと忘れて、相変わらず目の前の仕事に忙しくし、人からの意地悪やらに腹を立てている。そんなんでいいのか?ってちょっと後ろめたく思うと同時に、そういうものなのかもしれないとも思う。

今度、CD1枚を全部聴こう。そして、ねえさんに「あんたまだそんな情けないの」って言われないように生きようって思えるといいな。

人から歌を選んでもらうのって、いいね。歌と選んでくれた人の記憶が、結びつくのだ。そして、自分のことを思って選んでくれた、という特別感がとても嬉しい。いままでに僕がひとからもらった「スペシャルCD」は、全部そう。

言葉でもなく、美味しい食べ物でもなく、服やアクセサリーでも、温泉旅行でもない、選曲というプレゼント。僕が人にそれをやったとしてありがた迷惑だろうから、CDは作らない。むかし実際に何人かの人にはあげたことはあったけど、「趣味の押し付けじゃあるめえか」と、後でちょっと気まずくなった。だけど、もらえると嬉しいもんです。

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