ある映画制作のドキュメンタリー

カントク。

いま公開中の、大人気のアニメーション映画の制作を追ったドキュメンタリーを観た。監督の仕事の仕方に、肝を抜かれた。

少しでも面白くなければ、すでにいくらか進んでしまったものでも、ちゃぶ台を返してゼロに戻すんだよ。「自分のイメージできるものくらいでは、面白いものはできない」って言っていたのが印象的だった。アイデアが降りるのをじっと待ち、いろんなものを試し、そうやって超絶遠回りしながら作品を作っているのだ。そんな監督に、スタッフは振り回されまくり。

と、こんな言い方をしているけど、決して否定的に観ていたわけじゃない。ほんとうに「おもしろい」と思えるものが作れるまで妥協しない姿勢は、素直に凄いなと思った。ただ、絶対に真似できないな、とも。

あるのは、「いい作品を作りたい」という気持ちだけ。名を成すとか、誰かに感謝されたいというのもない。良い作品を作ることのほうが、命より大事なんだって。「なぜそんなふうに、死にそうになりながら映画を作るのか?」という質問に、監督は「自分にはこれしかできないから」と答えていた。僕はそれがとてもかっこええなと思った。

「これしかできない」というくだりじゃなくて、「いい作品をつくることだけでいい」、というありようが。僕は一緒に仕事をする人が幸せでなければ、自分も幸せではないから、アーティストにはなれない。変なこだわりはさっさと捨てて、「これで喜んでくれるっしょ」というところでぱっと形にしてしまう。絵は描くけど、アーティストではないんです。

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